たまがわ会議

自分たちで実感する「人権問題」

July 20, 2017

世界約150の私立校が加盟し、年に1度国際会議を行うラウンドスクエア。加盟校である玉川学園でも、国際会議の雰囲気とラウンドスクエアの6つの理念「IDEALS」を体験して理解を深めることをねらい、毎年、ラウンドスクエア実行委員会が主催して「たまがわ会議」を開催しています。

今年は7月18日から20日の3日間で行われ、“Human-rights issue(人権問題)”のテーマのもと約90名の生徒が、さまざまなワークショップやディスカッションに参加しました。

01

最初の活動は、「玉川アドベンチャープログラム(TAP)」。
他者とのつながりの大切さや“自分”を知ること目的にした各種のワークをとおして、緊張をほぐしていきました。

02

「“人権”や“人間”を突き詰めていくと、最終的に“自分とは?”という疑問に向き合うことになります。自分を知るためにやっていることはありますか?話し合ってみてください」。

インストラクターの話を聞いて活動を開始した生徒たち。互いの共通点を見つけるワークや、自分の短所を長所として言い換えるゲームを繰り返すうちに、自然と笑顔が増え、初対面同士で緊張ぎみだった表情はどんどん和らいでいきます。

03

「TAP」のワークで自分の意外な一面や仲間の個性を発見しながら、心と体をほぐして、これからの3日間を楽しみ学ぶための準備を整えました。

04

午後は、「児童労働」を議題にした模擬国連が行われました。開発途上国と先進国合わせて15ヶ国の中から担当する国を選び、その国の代表として、すべての国が利益を得られるように案を出し合い、解決策を探っていきます。

05

「児童労働をなくすために教育を見直します。その支援をしていただける国を探しています。国が発展した際には自国の物資を提供します」「開発途上国の児童労働問題に対する知識を、先進国の国々で広めてほしいと思っています」など、自国の意見を表明しつつ、互いの国にとってよりよい案になるよう、活発な議論が行われました。

06

最後には、それぞれの立場の国が相互に利益のある案を考え出して見事可決。問題を解決した喜びと、無事終えることができた安堵で、生徒たちに笑顔があふれました。

07

2日目は、グローバルキャリア講座と、その内容についてグループでディスカッション形式で話し合うBaraza(バラザ)が行われました。

講師にお招きしたのは、セクシュアル・マイノリティ(LGBT)への理解を広げ、サポートする活動を推進する杉山文野さん。ご自身の経験を軸に、セクシュアル・マイノリティを取り巻く現況についてお話いただきました。

08

「性ってなんだろう?」と問いかけ、27に分類した性別論や、LGBTの出現率をわかりやすい例えで伝える、杉山さんの軽妙な語り口に、すぐに引き込まれていく生徒たち。トランスジェンダーは意外に身近な存在であることも実感していきます。

09

幼い頃から違和感に悩み続けた杉山さんが、恋愛、親や友達への告白、進路など、葛藤し、乗り越えながら理解者を得て、“自分”を認めていったエピソードは、立場は違っていても、時に惑いながら「自分」を探して生きる人間として、それぞれの胸に響きました。

11

そして、まずは自分が幸せになること。多様性を受け入れて“自分らしく生きる”ことの大切さを、杉山さんの生き方から感じ取り、学びました。

10

そのあとのBarrazaでは、チームごとに、「感じたこと」「私たちにできること」について話し合いました。
ほとんどのグループが「LGBTについて知らなかった」「意外に身近にあることだった」という感想を持ち、そこからできることを考えていきます。

12

発表では、各グループが、“知る”ための機会づくりや多様な個性が生きやすい社会づくりを提案。
「ここだけで終わりにしないで、今後、実践をしていくことが大事なことだと思います」。最後に進行の生徒が意見を伝え、全員の拍手で終了しました。

13

「たまがわ会議」最終日。午前中は、世界の難民の現状を知り、ユニクロが主催する「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」を通じて自分たちに何ができるのかを考えるワークショップを行いました。

14

講師は、総務部の安田徹さんと町田鶴川店店長の田部裕作さん。
「難民とは、もともとはみなさんと同じように普通に暮らしていた人なんです」。

“服”という身近なテーマをとおして、遠い存在だと思っていた“難民”も、自分たちと同じように生活していることや、服がないことで命が脅かされる現実があることを知りました。

15

「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」の意義を実感した生徒たち。「たまがわ会議」のあとに行う、幼稚部の子どもたちにプロジェクトへの協力を呼びかける紙芝居づくりをはじめます。

難民とはどんな人たちなのか、服を寄付するとどんないいことがあるのか、幼稚園児に届くように表現を工夫して作成。

16

本番を想定しての発表では、寸劇やユーモラスなやさしいことばで、“服のチカラ”について語りかけました。

「子どもへの伝え方って難しいなと思いました」と実感しつつ、国際問題に対して自分たちができることを探した、充実した時間になりました。

17

午後は、映画を題材に「差別」について考える活動からスタート。
公開時期の違う数本の映画を鑑賞し、そこに表現されている「差別」「反映された社会情勢」「人権」とその推移をグループで話し合ってまとめていきます。何気なく観ていた映画の中にも「人権」の問題が表現されていることに気づきました。

18

その一方で、障がい者体験も行われました。
目が見えない人の役と手を引く役に分かれて、障害物のあるコースを歩きます。実際に手を取り合って歩くことで、障がいを持つ人の大変さと、その人をサポートする大変さを、身をもって学びました。

19

最後は、「差別用語」についてディスカッション。「ハーフ」「コミュ障」「ホームレス」「男女」などの用語が、差別用語なのかどうか、また、それらを言われたらどのような気持ちになるかを話し合いました。

20

「“男女”って差別じゃないよね?」「でも、“女男”っていう人がいてもおかしくないよね?」「状況によって、言われたときの感じ方も変わるね」など、ディスカッションは次第に熱を帯びていきます。
そのことばに対する実感をベースにした、“答えのない”議論は、さまざまな立場や視点から意見を出し合うことで深まり、「差別」や「人権」について多くの理解につながっていきました。

DSC02772

最後は、午後のワークショップでのまとめと考察を全員に共有しました。
この3日間で学んだことを関連させて、今回のテーマ「人権」を考えたことが伝わりました。

DSC02826

「これまで人権について学んできたつもりだったけど、いろんな人の意見から自分ひとりでは気づけなかったことが学べた」「LGBTなど、新鮮なテーマから新しい視点を得ることができました」。
さまざまな知識を得て、自分で考え、体験を繰り返してきた3日間を振り返ることばには、ひとまわり成長した“自分”が映し出されていました。

23

こうして、終了した今年の「たまがわ会議」。
少し視界を広げた先にあるたくさんの世界を知ること、人間の多様性を受け入れることが、グローバルな生き方の基本であることを、しっかりと心と身体に刻みました。

24

【講師プロフィール】

25_sugiyama

杉山文野
Sugiyama Fumino
フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてジェンダー論を学んだ後、その研究内容と性同一性障害の診断を受けた経験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』(講談社)を出版。韓国語翻訳やコミック化もされ話題を呼ぶ。現在、日本最大のLGBTプライドパレードの特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事、セクシュアル・マイノリティーの子どもたちをサポートするNPO法人ハートをつなごう学校代表。渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務め、日本初となる同区の同性パートナーシップ証明書発行にも携わる。

26_unicro

安田 徹
Yasuda Toru
1999年玉川大学文学部卒業後、東海大学附属相模高等学校 体育科勤務。株式会社ファーストリテイリングに入社し、静岡市に配属。日本各地で店長として勤務し、2012年に中国上海オフィスでの勤務も経験。2015年より現職。

田部裕作
Yuusaku Tabe
株式会社ユニクロ町田鶴川店店長。2010年京都大学法学部卒業。2011年株式会社ユニクロに入社。大阪の店舗に配属され、半年後に店長、1年後に東京本部マーケティングチーム配属。その後店舗に帰任し、様々な店舗で店長を経て2016年現任。